昭和28年03月05日 衆議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「そこで日本共産党の軍事組織は、御承知のように軍事委員会によって統轄をされておるのでありますが、その組織の行動的部面を受持ちまするいわゆる中核自衛隊は、現在われわれのところにわかっておりますのは約600隊でありまして、隊員数が5500名でございます。われわれのわかっている資料によるものはさようであります。」

昭和28年09月09日 参議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「只今私のほうで入手をしておりまする材料等から判断いたしまして、これらの中核自衛隊、或いは遊撃隊という大衆層組織の隊員は恐らくまあ8000から1万ぐらいであろうかと、私のほうでつかんでおりますものにつきましては、さように考えられるのであります。」

昭和28年03月05日 衆議院 地方行政委員会

[016]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
それでは私からできるだけ詳細に申し上げたいと存じます。またそれにつきまして御質問等に応じましてお答えを申し上げたいと存じます。中には公開の席でははばかるというものがございますから、そういうものだけは別の機会に申し上げることにいたしたいと思います。あるいは横路さんは、そんなことは知っていることばかりだとおっしゃいますかもしれませんが、一応前提としてお話申し上げます。

御承知のように、昨年の下半期の白鳥事件からメーデーあるいは吹田事件からこれまでの間に、全国的に起りましたあの火焔びん的街頭の集団暴力行為の様相は、これは一々申し上げるまでもございませんが、あの事態は共産党の第五回全国協議会で採択されました新方針にのっとったものであることは申し上げるまでもありません。

この方針は、一言で申しまするならば今までの共産党の観念的な行動を清算して、共産党の最終目的は、武力闘争によって政権を奪取しなければならないという、この実践に移るという宣言をしたわけであります。それに基きまして軍事方針を打ち出す、軍事組織、軍事活動というものに全面的な力を入れて参ったのであります。

その結果が、ただいまも申しまするように、昨年の下半期の様相を示したのであります。しかしこれらの行動に国民の政治的なバックというものと必ずしも一致をしていなかった、国民から遊離をしておった。これではかえってマイナスをとるものであるから、むしろこういった革命的な気分に国民を持って行く。その方の組織と運動を一層強化をいたすとともに、それによって、できて参りました機運を、さらに彼らの軍事組織の強化、軍事行動の実践によって目的を達成するというように変更になったのは、昨年7月のいわゆる徳田論文以降の様相でございます。

御承知のように、昨年の10月東京都内で開催されました第22回の中央委員会の総会におきまして、われわれは4つの論文を採択していると考えるのであります。

その1は、軍国主義復活に反対し、吉田政府打倒に全国民の統一を強化せよという論文。これは結局反米闘争の強化の論述であります。

いま1つは、総選挙闘争を終って、その教訓に学び、何ゆえに総選挙において共産党は敗北を喫したか、これを再検討し、次の参議院議員の選挙に備えることはもちろん、これを教訓として今後の共産党の合法活動をいかに強化するかという点を中心に論述をいたしておるのであります。

第3は、武装闘争の思想と行動の統一についてという論文でございますが、武装闘争というものにつきましては、先ほど申しますように、国民の政治的意欲、そしてこの武装闘争をやることにおいて、どういう結果を招来するか、単に武装闘争だけではいけない、政治と結びついた武装闘争を強化しなければならないということを詳細に論述をいたしております。この武装闘争の思想と行動の統一という点は、われわれ直接治安面といたしましては、特に関心を払わざるを得ない問題であります。

4番目は、党内教育の方針というのであります。党内教育を強化し、真に共産主義に身を投ずる真剣なる党員の養成ということを、ここで非常に強化をいたす、その方法等を詳細に教えておるのであります。これによって党は当面の情勢と、その中にある革命的素因を分析し、また先ほど申しました新綱領の武力革命方針を効果的に発展させる実践方法をさし示し、また先ほども申しますように、党内教育の方針によって、党の質的向上の必要を強調し、その方法等を教えておるのであります。

これらの決定事項は、ただわれわれ一片の情報によって判断をしておるのではありませんので、党内の機関紙の「平和と独立のために」の号外、その他党発行の文書の中に、公然と書かれて頒布をされておるのであります。現在日本共産党は、この決定事項に基いていろいろな実践をやっておるのであります。その後最近までにおきましては、この第22回中央委員会の決定事項の党全体の討議が、末端細胞を含めて、ほほ終了したように認められるのであります。某方面におきましては、別に旧臘きめられました全国選挙対策会議の決定を中心といたしまして、各地方委員及び県委員の選挙対策会議が一応終了いたしました。

さらに組織的には、彼らの基本組織指導部、それから大衆団体指導部との二本建を建前とする新機構が、各府県ビューローにおきましても確立されまして、大衆団体の内面指導による統一行動組織化の態勢がほぼなったと認められるのであります。一方党員の個々の能力を高めるための党内教育は、引続き強力に実施されております。特に各重要工業地帯におきまする経営工作学校、農山村における農民工作学校、その他基地工作学校、軍事工作学校、文化工作学校等を諸所に設けまして、彼らの実践と理論の相関的な効果をねらった教育活動が、漸次各地において活発化いたして参っております。他方前月に引続きまして、自由労組のグループ指導、全医労グループ指導、私鉄グループ指導、教育、各大学学生自治会グループ指導、日農のグループ指導等が、こもごも中央グループ会議を開きまして、大衆団体の指導面の準備が、さらに強化をいたしているような次第でございます。

そこで日本共産党の軍事組織は、御承知のように軍事委員会によって統轄をされておるのでありますが、その組織の行動的部面を受持ちまするいわゆる中核自衛隊は、現在われわれのところにわかっておりますのは約600隊でありまして、隊員数が5500名でございます。われわれのわかっている資料によるものはさようであります。

またこの中核自衛隊のほかに、遊撃隊組織というものを昨年から組織するようになって参りました。われわれ当初は、この遊撃隊組織というのは、彼らの文書、レポ等の中に現われておったのでありますが、これの実体をつかみ得なかったのであります。しかし御承知の昨年8月埼玉県に発生しました横川事件を取調べて参りますと、これには西部遊撃隊及び武蔵野第一独立遊撃隊というものが存在し、これらの隊員によって行われたということが明確になって参ったのであります。この遊撃隊組織も全国にわたって次第に進んでいるように見受けられるのであります。

この中核自衛隊及び遊撃隊組織のほかに、日本共産党では中核自衛隊などの今申しました軍事組織の補給源といたしまして、あらゆる闘争の中に反ファッショ委員会、青年行動隊、その他いろいろの名称で、いわゆる抵抗自衛組織というものの活動を強く推し進めている現状であります。

現在の共産党の組織と、その党員の数の概略を申し上げてみますと、公然組織、いわゆる合法組織の面におきましては、御存じのように中央、それから9つの地方、各県、及び県内の地区、それから郡市、その下の細胞というようにわかれておりますが、党員は約9万、シンパ数が約18万と推定をいたしております。

非公然の組織も公然組織に対応するものでありますが、この非公然組織のメンバーとして活動いたしております党員が、先ほど申しましたもののほかに3万8000、それから先ほど申しました中核自衛隊という特別な組織のものが約5500、これらの組織、並びに党員、シンパ等の数は、いろいろな資料からわれわれ推定をいたしておるのでありまするが、最近党の中央部におきましては、秘密指令をもつて、各府県内の政治地図を作成をするように命じておるのであります。

これらの求めておりまするところは、その細胞に至るまでの組織、その組織内の党員、シンパの数、これを町村郡市別に図面に入れまして、なお共産党の発行いたしておりまする秘密文書と申しまするか、冊子と申しますか、そういうものの購読者の数、種類、それから朝鮮人の数、朝鮮人のうちでいわゆる祖国防衛隊の隊員、あるいは民主愛国青年同盟の隊員の数、そういったぐあいに、朝鮮人の中でいわゆる北鮮系と目される、われわれの治安対象になりまする、彼らの軍事的活動としてただちに立ち上れる組織内に入っておる者の数、あるいはそれが立った場合に、同時に立つであろう者の数というぐあいに、共産党の彼らのほんとうの勢力、北鮮系の、彼らに呼応する真の勢力というものを、各図面に入れて報告をさせておるのであります。

その中には、重要工場、あるいは彼らの言葉をもっていたしまするならば、日本の防衛力といいますか、あるいは権力的なものといいまするか、具体的に申しますると、駐留軍の駐在地、そこの兵員の数、保安隊の駐在地、隊員の数、警察学校の所在地、その数というものを丹念に記入をさせて報告をいたさせております。

自分自身の勢力と、これに対抗するであろう日本側及びアメリカ駐留軍の勢力、並びに彼らの目標とする電源地、重要工場、その工場内における工場労働者の数、その中において彼らに呼応し得るであろう数、こういったものを丹念に調査をしておるのであります。

そういったものからも、われわれ先ほど申し上げましたような数字を推測をいたしておるのであります。もちろんわれわれの方で、そういった中央に報告するもの一切を知っておるわけではございません。ところどころそういうものを入手し得たものから推測をいたしておるのであります。

ことに組織の面におきましても、訓練の面におきましても、いわゆる祖国防衛委員会に所属をいたしまする北鮮系の活動は、さらにとみに潜行的に活発化をいたしております。彼らの非合法面における各種の隊の組織の推進化、実際の訓練というものも、最近特に活発になって来ておるように見受けられるのであります。祖国防衛隊の方には8000名の決死隊を結成をするということも聞いておるのであります。これはまだ私がはっきりその決死隊ができておるということを確言するには至っておりません。しかしこれは単なるうわさ、想像の程度ではないであろうと考えて、おるのであります。

かようにいたしまして、現在表面はそういった警察対象になりまする暴力活動というものは、影をひそめたかに見えておりますが、しかし裏面においては、むしろ着々とその準備を進め、時の来るのを待っておるという現状だと考えております。

合法面において、各種の段階を通じてあらゆる運動を展開いたしておりますることは、これは御承知の通りであります。この点は取締りの対象になるものではございませんけれども、かようにいたしまして、いわゆる思想面、行動面の統一活発化を策しておるというのが、今日の現状のように考えるのであります。そうしてわれわれ警察面におきまして最も注目を要しまするのは、これらが一定方針のもとに立つという場合には、必ず同時多発ということが当然の帰結であります。

警察といたしましては、そういった同時多発の事態に対処し得るように、ふだんからそういったいわゆる革命勢力と申しますか、軍事行動に移り得るものの実態を完全に把握をいたしまするとともに、どういうやり方で、どういう方法でいわゆる革命的暴力行為をやるかということを調査をしながら、これに対処し得る方法、訓練もやって行かなければならないのであります。

これが実際実施に移されるという場合には、それに対応し得る活動を、ただちに始めなければならないようなわけでありまするから、われわれといたしましては、さような場合に対処し得るのに遺憾のない警察の制度、あり方というものを、今のうちに確立をいたしておくことが何よりも肝要だと思うのであります。

私から進んで申しまするのはおかしいようでありまするが、さような場合には日本には保安隊があるではないか、それはもっぱら保安隊の責務であろうという考えを持たれる方々が多いのであります。しかしながら保安隊が出動いたしまするということは、何と申しまするか、最悪の場合でなければなりません。できるだけ普通の警察の方法でかような事態を防止をし、鎮圧するということが最も望ましいと考えておるのであります。